工場で製造された鉄筋は、輸送や現場での作業性などを考慮して、一定の長さ(定尺)に切断され、現場に搬入されるか、折り曲げが必要な場合は、加工場で加工された後に現場で搬入されます。
建設現場での鉄筋の組み立ては通常1層ごとに行うので、上下階の柱の鉄筋同士を接合する必要があります。また、梁も構造上必要な鉄筋の長さが定尺より長い場合が多いので、やはり鉄筋同士を接合する必要があります。この、鉄筋同士の接合を「鉄筋継手」と言います。
鉄筋継手は、重ね継手、ガス圧接継手、溶接継手、機械式継手などがあります。
我が国で鉄筋コンクリートによる施工が始まったのは、1900年頃からですが、当初は、すべて、重ね継手で施工されていました。その後、ガス圧接継手が開発されて、太径鉄筋の継手が可能となり、大型構造物の施工が容易となりました。さらに、高度成長期を迎えて、鉄筋コンクリート造の施工に当たって、プレキャスト工法や鉄筋の先組みなどの合理化工法が開発されるとともに、それぞれの工法に適した各種の鉄筋継手も開発されました。その結果、鉄筋の機械式継手、溶接継手などが普及するようになりました。鉄筋継手工法の開発の歴史を次図に示します。
鉄筋継手には、紹介したように、各種の工法が使用されていますが、継手部に要求される性能は同じです。このため、工法毎の施工計画を作成、技量資格者が施工したのち、継手技量者及び継手施工会社の品質管理者が自主検査を行った後、引き渡します。その後、施工者は受け入れ検査を行い、継手部の性能を確認したのち次の工程に進みます。品質管理の手順は、すべての工法に共通です。
本協会では、重ね継手を除く、ガス圧接継手、機械式継手、溶接継手工法について、「鉄筋継手工事標準仕様書」を整備し、鉄筋継手の統一した施工管理方法、継手部の検査方法等について規定しています。検査は、外観検査と非破壊検査があります。基本的には外観検査は全数、非破壊検査は抜き取りで行います。工法毎の検査項目、検査方法は、上記の「鉄筋継手工事標準仕様書」に記載されていますので参照してください。
本協会が発行する「鉄筋継手工事標準仕様書」は、建築及び土木の鉄筋継手工事における技術基準となるものです。また、鉄筋継手工事の契約図書として用いられるものであり、発注者と工事の請負者(施工者)との間に適用されることを前提として作成しており、工事の請負者(施工者)と継手施工会社との間に準用することも差し支えないものです。本標準仕様書は、原則として制定・改訂の都度、関係省庁をはじめとする多くの関係者で構成される改訂委員会において審議され、さらに日本建築学会、土木学会の意見照会の後、「公共建築工事標準仕様書」(公共建築協会、国土交通省大臣官房官房官庁営繕部監修)をはじめとして、日本建築学会、土木学会など多くの学協会、団体の規準、標準仕様書に採用されています。
ガス圧接継手部の超音波探傷検査では、接触媒質として、グリセリンもしくはグリセリンペーストが使用されます。グリセリンは炭素と水素、酸素からなる代表的な三価アルコールで、無色で粘性があり、甘味性のある吸湿性の液体で水あるいはアルコールにはよく溶けます。グリセリンペーストも同様な性質のものです。一般的に超音波探傷検査に使用するグリセリンの量は、個人差はありますが、100箇所の検査で100㏄程度と言われています。
鉄筋コンクリート構造物の現場では、配筋-圧接-検査-コンクリート打設が連続で行われるため、多くの場合は、ガス圧接継手部の近傍にグリセリンが付着したままの状態でコンクリート打設が行われます。
グリセリンの影響について調べた例として、武蔵工業大学の昭和58年度卒業研究概要集の中の「UTによるグリセリンのコンクリート強度に及ぼす影響」があります。本文献及び既往の知見を参考にすると、継手部に2cc程度のグリセリンが付着した場合では、グリセリンはコンクリート打設時にコンクリート中に拡散してしまうために、コンクリートの強度・耐久性やコンクリートと鉄筋の付着強度への影響はほとんどないものと考えられます。ただし、作業中に何らかの誤りにより、グリセリンを大量にこぼしてしまったりすると、安全上も影響が無視できない量となりますので、濡れたウエス等を用いて十分に除去する必要があります。
技術委員会委員 倉持 貢
会誌「鉄筋継手」Vol.46 No.1掲載
「鉄筋継手工事標準仕様書 ガス圧接継手工事(2009年)」では、外観検査を行って、著しいつば形があった場合、圧接部を切り取って再圧接を行うことと規定しています。
この場合の、切断位置に関しては特に規定していません。一般的には圧接部のふくらみの位置をはずした位置であれば、どの位置でも良いとしています。すなわち、圧接面から、鉄筋径分程度離れた位置であれば、強度的に影響はないと思われます。
圧接部の断面のビッカース硬さの測定結果では、母材部と比較して、圧接部及び熱影響部でも著しい硬化や軟化は見られないという試験結果があります。SD345のビッカース硬さの測定結果では、圧接部も熱影響部もほとんど母材と変わらない結果が得られています。
したがって、両側のふくらみ部の起点当たりから切断して端面加工を行った後、再圧接を行えばよいと思います。
なお、切断を行うことで、継手を行う位置が従来の位置と異なりますので、継手部の切断・再圧接の場合は、部材のどの位置で切断を行うかについては、構造設計者と協議してください。
技術委員会委員 吉野 次彦
会誌「鉄筋継手」Vol.46 No.1掲載
鉄筋の切断及び圧接端面の加工については、「鉄筋継手工事仕様書 ガス圧接継手工事(2009年)」の「3.3.4鉄筋の切断及び圧接端面の加工」に規定しています。3.3.4の解説の中に、「鰯 圧接端面の加工のため鉄筋端部を切断する場合は、本協会が認定した鉄筋冷間直角切断機(写真3.7)を使用する。・・・・、圧接作業のため当日現場で鉄筋の切断を行う場合、グラインダー研削を必要としない。ただし、ばりが発生した場合は、ばりなどが夾殺物として圧接面に介入しないようにディスクグランダーで除去する必要ある。・・・」とあります。
このように、圧接端面の仕上げとしての面取りの役割には、継手性能を確保する上での夾殺物の処置と、ばりによる切り傷の防止など安全上の処置があります。したがって、ばりなどの夾殺物が圧接面に介入していないこと、鉄筋端面が安全上問題ないことなどを確認し、処置が必要でなければ、面取りをする必要はありません。
技術委員会 副委員長 笹谷 輝勝
会誌「鉄筋継手」Vol.45 No.4掲載
ガス圧接継手が備えるべき性能については、「鉄筋継手工事標準仕様書 ガス圧接継手工事(2009年)」の「1.2ガス圧接継手の性能」に規定しています。その条文は以下のようになっています。
- ガス圧接継手の引張強さは、鉄筋母材の引張強さの規格値を満足すること。
- A級継手として施工するガス圧接継手は、(社)日本鉄筋継手協会規格 JRJS0002(ガス圧接継手性能判定基準)に基づき、1.に加え、次の性能をすべて満たすものとする。
- ガス圧接継手の降伏強度は、鉄筋母材の降伏点の規格値を満足すること。
- ガス圧接継手が塑性域において増減する繰返しの引張力を受けた後であっても、母材部分が十分な伸びを生じるまで継手が破断しないこと。
- ガス圧接継手が引張力を受けて破断する場合は、圧接面以外の部分で破断すること。
条文1.は構造部材における引張力の小さい部分(部材断面)に設ける場合の鉄筋継手が備えるべき性能であり、条文2.はA級継手として施工したガス圧接継手が備えるべき性能を規定しています。ここで、引張試験における破断位置としては、圧接面以外の部分と規定しています。圧接面以外の部分には、熱影響部も含まれます。ガス圧接継手の熱影響部は普通強度の鉄筋継手の場合、圧接面から片側1d(d:鉄筋径)の範囲、SD490の場合、圧接面から片側約1.2dの範囲に相当します。
なお、構造部材における引張力の小さい部分(部材断面)に設ける場合の鉄筋継手の性能には伸びの規定がありませんが、A級ガス圧接継手の性能は、本協会規格JRJS0002(ガス圧接継手性能判定基準)に目標とする継手性能を示しています。ここでは、降伏点に関する性能と降伏後の繰返し荷重下における安定した性能及びその後の破断に至るまでの伸び能力に関して規定しています。継手が引張力を受けた場合に最終的に鉄筋母材が破断しなくても、鉄筋母材が降伏しその後のひずみ硬化域を経て母材自身の引張強さ(規格値ではない)に達するまで応力上昇した後に破断を生じるのであれば、圧接部(圧接面以外の部分)での破断を許容しています。圧接部のうち圧接面での破断を除いたのは、ガス圧接技量資格者によって標準仕様書で定める適切な圧接施工がなされたならば通常は圧接面破断は生じないというこれまでの経験に基づくもので、圧接面が破断するときは何らかの不適切な要因が考えられます。
また、破断位置が母材であれば母材自身の伸び能力を発揮できますが、まれに圧接器の締付けボルトによる鉄筋表面のきずを起点に母材部分で脆性的に破断することがあり、その場合鉄筋の伸びは著しく低下するので、この様な破断は母材破断とは見なしません。詳しくは、本協会「鉄筋のガス圧接継手性能評価に関する調査研究」(平成16年5月)、「鉄筋SD490のガス圧接継手性能に関する研究」(平成16年5月)を参考にして下さい。
技術委員会 副委員長 笹谷 輝勝
会誌「鉄筋継手」Vol.45 No.4掲載
ガス圧接は、母材を溶融することなく固体のままで接合するいわゆる固相接合法です。アーク溶接のような溶融接合と異なり、外観に接合面が「すじ」として現れるのが一般的です。この「すじ」は未接合部ではないので、継手強度に影響するものではありません。工事現場によっては、わざわざバーナーで加熱して「すじ」を消すように指示されることもあるようですが、過剰な加熱によりかえって不具合が生じることにもなりかねません。また、圧接面の位置の「すじ」が消えていると、圧接部の外観検査において「圧接面のずれ」を検査することができません。「圧接面のずれ」は、継手強度の低下につながります。「すじ」をわざわざ消してしまうと、この重要な検査ができません。
平成16年版の公共建築協会「建築工事監理指針」では、圧接面の位置に「すじ」が残っている圧接部を否とする図が示されていましたが、平成19年版の監理指針改訂に際し、本協会(当時は日本圧接協会)より圧接部の「すじ」を否とする図の修正ついて申し入れを行い、改訂版ではこの図は削除されました。
技術委員会 幹事 中澤 春生
会誌「鉄筋継手」Vol.45 No.3掲載
「鉄筋継手工事仕様書ガス圧接継手工事(2009年)」の「3.3.5気温・天候」に「(4) 降雨・降雪時には、原則として圧接作業は行わない。ただし、継手の品質に影響を与えない程度の少量の降雨・降雪の場合には、監理・責任技術者の承認を得て作業を行うことができる。」と規定しています。また、解説には、「本協会では、降雨量の程度が鉄筋継手の性能に及ぼす影響について実験的に調査しており、一般作業のできる程度の降雨量であれば健全な圧接ができることが確認されているが、降雨・降雪に気をとられて圧接作業に神経が集中できなくなることの影響が考えられる。したがって、降雨・降雪時に圧接作業を行う場合には、監理・責任技術者の承認を得ることにした。」とあります。
本協会で実施した、降雨量の程度が鉄筋継手の性能に及ぼす影響についての実験的研究では、雨の強さを下表のように分類し、このうち微雨、小雨、なみ雨及び強雨について試験を実施し、雨が降っていない通常の条件で施工されたガス圧接継手と同様な継手性能を得ており、一般作業のできる程度の降雨量であれば健全な圧接ができることを確認しています。しかしながら、何よりも降雨・降雪に気をとられて圧接作業に神経が集中できなくなることへの影響を考えれば、降雨・降雪時の圧接作業は望ましくないのは当然です。ただし、適切な防護を施した場合はこの限りではありません。いずれにしても、降雨・降雪時に圧接作業を行う場合は、監理・責任技術者の承認を得ることが必要です。
詳しくは、本協会:圧接技術調査研究報告概要集「「鉄筋のガス圧接における降雨量が継手性能におよぼす実験的研究報告」」(昭和61年5月)を参考にして下さい。
技術委員会 副委員長 笹谷 輝勝
会誌「鉄筋継手」Vol.45 No.3掲載
ガス圧接できる鉄筋の種類は、JIS G 3112(鉄筋コンクリート用棒鋼)に適合するもので、鉄筋の直径は16mm(異形鉄筋の場合は呼び名D16)以上、種類はSD295A,BからSD490までガス圧接が可能であることが「鉄筋継手工事仕様書 ガス圧接継手工事(2009年)」に規定されています。この規定に適合する鉄筋であれば、一般の異形鉄筋と節形状が異なるねじ節鉄筋でもガス圧接は可能です。
ねじ節鉄筋は、鋼片(billet)の製造工程までは一般の異形鉄筋と全く同じ工程であり、圧延段階において節形状がねじ状に圧延されたもので、機械式継手として継ぐことを前提に開発された鉄筋です。ねじ節鉄筋をガス圧接によって接合した場合の継手性能について、本協会技術委員会内に小委員会を設置し、「ガス圧接継手性能判定基準」に基づいてねじ節鉄筋のガス圧接継手性能を評価しています。
ねじ節鉄筋の断面は一般の異形鉄筋(ここでは竹節鉄筋と呼ぶ)に比べて楕円形状をしていることから、写真1に示す4タイプの圧接継手試験片で継手性能を確認しています。Aタイプはねじ節鉄筋のリブを合わせてガス圧接した試験片、Bタイプはリブを90度回転させてガス圧接した試験片、Cタイプはねじ節鉄筋と竹節鉄筋のリブを合わせてガス圧接した試験片、Dタイプはねじ節鉄筋と竹節鉄筋のリブを90度回転させてガス圧接した試験片です。試験の組合せは表1のとおりです。
その結果、ねじ節鉄筋同士及びねじ節鉄筋と一般の異形鉄筋をガス圧接する場合、偏心調整機能を有さない圧接器(ストレート型)を用いても圧接部のふくらみ形状は外観検査の合否判定基準内であり、また、「鉄筋継手工事仕様書ガス圧接継手工事(2009年)」に準じて適正に施工されたねじ節鉄筋の圧接継手性能は、一般の異形鉄筋同士をガス圧接した場合と同等にA級継手の性能を有することが確認されています。
詳しくは、本協会:調査研究報告書「ねじ節鉄筋のガス圧接継手性能に関する研究」(平成18年5月)を参考にしてください。
技術委員会 副委員長 笹谷 輝勝
会誌「鉄筋継手」Vol.45 No.2掲載
呼び名の異なる鉄筋同士のガス圧接に関して、本協会は以前に継手性能評価試験を行い、適切な品質管理の下で施工された呼び名D19~D40の範囲(鋼種SD345、SD390、SD490)の1サイズ違いの継手を対象にA級継手としての性能を確認しました。その際に異径継手は同径継手よりも圧接施工が難しく高度な技量が必要であることが分かり、新たに「異径継手のガス圧接施工要領(案)」を提案しました。それには、次のように要約されています。
また、異径継手の曲げ試験を行うと写真2のように細径側のみが曲がって適切な試験の実施が困難なため、施工前試験などにおいて機械試験を実施する場合には、曲げ試験でなく、引張試験とする必要があります。異径継手の圧接に関する詳細は、本協会:調査研究報告書「異種・異径鉄筋の圧接継手性能評価に関する調査研究」(平成19年5月)を参考にしてください。
技術委員会 副委員長 成原 弘之
会誌「鉄筋継手」Vol.45 No.2掲載
鉄筋継手工事標準仕様書 ガス圧接継手工事ならびに同溶接継手工事の「1.2節 継手の性能」(2)にA級継手の性能として、「b.ガス圧接(溶接)継手が・・・・、母材部分が十分な伸びを生じるまで継手が破断しないこと。」とあります。ご質問の「明確な伸び」とは、この「母材部分の十分な伸び」と同じ意味です。図1は、JRJS0002:2006(ガス圧接継手性能判定基準)における一方向繰返し引張試験の方法を示したものです。同図のように鉄筋の引張試験を行う場合、最初に規格降伏点を過ぎて引張降伏が生じると、応力が増えずにひずみのみが進む領域(降伏棚という。)が現れます。その後塑性変形を伴って応力が上昇し引張強さ(最大の引張応力)に達します(ひずみ硬化域)(ここでは、図の20回繰返しは無視します。)。さらに、引っ張り続けると、応力が低下しつつ断面にくびれが生じて破断に至ります。「母材部分の十分な伸び」を確認するには、鉄筋母材の引張ひずみを直接計測してもよいのですが、その代わりに鉄筋母材が引張応力に達する少し手前の応力まで達している状態を確認することでこれに代えることができます。
JRJS0002:2006(ガス圧接継手性能判定基準)は、引張試験における「母材部分の十分な伸び」の確認方法を以下のように定めています。
1)破断位置が母材部分の場合
σ b≧ σ bo
ここで、
σ b:試験による圧接継手の引張強度
σ bo:母材の規格引張強度
2)破断位置が圧接面以外の圧接部の場合
σ b ≧ α σ y
ここで、
σ b:試験による圧接継手の引張強度
σ y:試験による圧接継手の降伏点強度
α :1.35(ただし、SD490にあっては1.30)
上記2)は、圧接継手の引張強度に対して鉄筋母材の実際の降伏点(規格降伏点ではない)のα倍の応力上昇を要求しています。統計資料によれば異形鉄筋の降伏比(降伏点/引張強さ)の平均は約70%(SD490は約75%)なので、母材破断する場合のαすなわち降伏比の逆数は1.42(SD490は1.33)であり、上記2)のαはこれよりやや小さいものの「母材部分の十分な伸び」を確認するのに十分な値といえます。
技術委員会 副委員長 成原 弘之
会誌「鉄筋継手」Vol.45 No.2掲載
打ち継部の鉄筋を圧接する場合の概略を下図に示します。ガス圧接継手は鉄筋端面を加圧、加熱して接合する工法で、加圧・加熱によって原子結合で一体となる工法です。このため、鉄筋端面には所定の加圧力を加えるための専用の圧接器を取り付ける必要があります。この圧接器は鉄筋径に応じて大きさが異なりますが、鉄筋径毎にあるのではなく、下表に示すようにD22~D32用、D35~D38用、D41用、D51の4種類があります。打ち継部から鉄筋の突出長さ(L)は、最低、圧接器の(c+b/2)必要です。したがって、D35の場合は、(90+200/2=190mm)となり、余裕を見て、最低250mm程度確保できれば施工可能です。また、D41の場合は(100+230/2=215mm)となり、余裕をみて、300mm程度であれば圧接可能です。
なお、以上の条件は施工性に関する条件です。ご質問の場合の鉄筋の本数が分かりませんが、鉄筋が複数本の場合には、同一断面での全数継手となる可能性があります。継手位置及び、同一断面での全数継手の可否については監理・責任技術者とご相談のうえ、監理・責任技術者の指示に従ってください。
技術委員会委員 吉野 次彦
会誌「鉄筋継手」Vol.45 No.1掲載
当該JISの最新版JIS Z 3881:2009(鉄筋のガス圧接技術検定における試験方法及び判定基準)には、次のように規定されています。
「10 合否判定基準 b) 曲げ試験 すべての試験片の曲げられた平行部の外面に、割れが肉眼によって認められない場合を合格とする。」
また、当該JISの解説では、次のように記述されています。
「6.6 合否判定基準(本体の箇条10)6.6.2曲げ試験 曲げ試験を行った結果、すべての試験片の曲げられた平行部の外面に、割れが肉眼によって認められない場合を合格とした。ただし、この場合の割れとは、肉眼をもって観察されるものをいい、拡大鏡などを用いて発見できる割れをいうのではない。また、鉄筋の材質に起因する場合もあるので、圧接面及びそのごく近傍に生じた割れ以外のものについては対象としない。」
本協会では肉眼で見える割れであっても、圧接面又はその極近傍において円周方向に伸びた明らかな割れでなければ不合格としていません。これは、次の理由によるものです。
鋼の製造時には偏析により介在物が生じるが、鉄筋のような圧延材の場合には、介在物が圧延方向に伸長します。なお、介在物の存在状況を観察することで、鉄筋素材の変形状態、すなわち、メタルフローを確認できます。
圧接前の鉄筋では、介在物が長手方向に伸びた状態で存在していますが、鉄筋を圧接すると、圧接部付近の介在物は、圧接部のふくらみに沿って変形します(写真2)。
したがって、圧接した試験材を当該JISに基づいて、ふくらみ部を直径1.1d(d:鉄筋の呼び名の数値)の平行部を有する曲げ試験片に加工することによって、加工後の平行部表面に介在物が現れる(図1)ため、曲げ試験によって平行部が曲げを受け、この表面に現れた偏析の一部が開口し微細な割れが生じることがあります。これは、鉄筋材質によるもので、圧接技量に起因するものではありません。
以上の理由から、圧接面及びその極近傍に生じた割れ以外のものについては不合格の対象としていません。また、極近傍に生じた割れでも鉄筋材質によるものと判断される場合には、別の鉄筋を用いて再試験を行う必要があります。
技術委員会委員 矢部 喜堂
会誌「鉄筋継手」Vol.45 No.1掲載
最近の鉄筋コンクリート用棒鋼(JIS G 3112)は、そのほとんどが電炉メーカーで製造されています。また、同じメーカーでも、各地に工場を有しており、工場毎に、製造方法、化学成分等が多少異なります。
しかし、圧接できる材料はJIS G 3112(鉄筋コンクリート用棒鋼)の規格品で、鉄筋径は16mm以上(異形鉄筋の場合はD16以上)と規定されています。種類はSD295A,BからSD490まで圧接が可能で、この規定に適合する鉄筋であれば、異なるメーカー同士でも圧接は可能です。なお、種類の異なる鉄筋は、1鋼種違いまで、また、鉄筋径に関しては、7mm差までの鉄筋であれば圧接可能です。しかし、径違いの鉄筋が圧接できる工法は手動ガス圧接の場合のみで、自動ガス圧接の場合は装置の関係で径違いは圧接できません。
(社)日本鉄筋継手協会(旧:(社)日本圧接協会)では、「メーカーの異なる鉄筋の圧接性に関する試験研究」を昭和63年(1985年)に行っており、メーカーの異なる鉄筋の組み合わせでも圧接性に問題のないことを確認しています。
また、異メーカー間の試験研究報告書が必要な場合は、当協会にお問い合わせください。
技術委員会委員 吉野 次彦
会誌「鉄筋継手」Vol.45 No.1掲載
鉄筋継手の場合は、ガス圧接継手、溶接継手、機械式継手などの工法及び継手位置等を設計図書の特記仕様書に表示しますが、いずれの工法も、工法としての記号はありません。設計図書で指定する場合は、ガス圧接継手、溶接継手、機械式継手など、継手の工法と継手位置を指定するのみです。
鋼材の溶接に関しては、設計条件によって、すみ肉溶接、突合せ溶接などがあり、又、突合せ溶接でも、設計条件によって開先形状も異なるため、設計図書に開先形状を∥ もしくは レ 又は K と指定しますが、鉄筋継手の場合は、工法によって性能が異なることはなく、すべて母材強度を保証する継手です。したがって、工法による記号はありません。
鉄筋の溶接継手には、裏当て材の材質、形状によって何種類かの工法がありますが、すべての工法が、横向き(柱筋)、下向き(梁筋)とも、鉄筋軸方向に直角に切断して、所定のルートギャップを確保した状態を保持し、この隙間に溶接棒を挿入して溶融金属と鉄筋母材を溶融する工法です。ルートギャップは工法によって異なりますが、一般的に⚖mm~⚑⚐mm程度です。したがって、設計図書にルートギャップの指定をする必要はありません。
なお、下向きと横向きでは溶接技術が異なり、溶接工の資格にも、下向きのみ施工できる資格者と横向き、下向きの両方が出きる資格者がありますので、施工前に溶接技量者の資格証を確認してください。
技術委員会委員 吉野 次彦
会誌「鉄筋継手」Vol.45 No.1掲載
探触子の走査は,基本的には想定される圧接面に対して解説図⚕のような走査が理想的である。すなわち,鉄筋のリブの上において,一方の探触子(A)を圧接部のふくらみに接近した位置(1)に置き,他方の探触子(B)を次の式のY2で示される位置(2)近辺に置き前後走査する。
Y1+Y2=Dtanθ
ここに,
Y1:圧接面から一方の探触子(A)の入射点までの距離
Y2:圧接面から一方の探触子(B)の入射点までの距離
θ:屈折角さらに,探触子(B)で細かい前後走査を繰り返しながら,圧接部のふくらみに接近した位置まで走査する。このとき,探触子(A)は細かい前後走査を繰り返しながら,探触子(B)の走査に対応して常に上の式が成立するように走査する。この走査を圧接部のふくらみの両側において行う。前後走査するのは,圧接面が想定した位置(圧接部の中心)にない場合の欠陥の見落しを防ぐためである。
しかし,この走査は理想的ではあるが,探傷作業に習熟する必要があるので,圧接部探傷に十分であると考えられる本体に示す走査方法とした。
すなわち,一方の探触子を圧接部のふくらみに接近した位置,圧接面からほぼ1.4Dの位置(1/2Dtanθ),及び圧接面からの2Dの位置(2/3Dtanθ)に順次固定し,各々の位置において,もう一方の探触子を圧接部のふくらみに接近する位置から圧接面より2D(2/3Dtanθ)の位置まで前後走査する方法とした。
JIS Z 3062 解説
上記から明らかなように、JIS Z 3062とJRJS 0005との走査方法及び走査範囲に関する表現は若干変わりますが、相違するものではありません。特に、面積の小さい欠陥を検出対象としている溶接部の探傷では、探触子の適正配置を確保して、欠陥の見落としを軽減し、また、妨害エコーの識別精度を向上させるために、JIS Z 3062にはない、K走査基準線やタンデム基準線を、溶接継手部のリブ上にマークすることを規定しています。
技術委員会委員 倉持 貢
会誌「鉄筋継手」Vol.45 No.1掲載
鉄筋のガス圧接は、接合端面を突き合せて、圧力を加えながら、接合部を酸素・アセチレン炎で1200℃~1300℃ に加熱し、接合端面を溶かすことなく赤熱状態でふくらみを作り接合する工法です。
突き合せた両端面の原子が接合面を跨いで拡散し、金属結合して一体化することにより接合されます。このため次の3つの条件が必要です。
ガス圧接継手の原理はすべて共通ですが、施工方法には5種類の工法があります。このうち、燃焼ガスにアセチレン・酸素の混合ガスを用いる工法が3種類、天然ガス・酸素の混合ガスを用いた工法が2種類です。アセチレン・酸素混合ガスを用いる工法には、バーナー操作、加圧力の操作等を手動で操作する手動ガス圧接、加圧力、アプセット量、バーナー操作、燃焼ガスの調整等をすべて自動で制御する自動ガス圧接、手動ガス圧接でふくらみを形成後、ふくらみ部が赤熱状態の時に、ふくらみ部をせん断刃で除去する熱間押抜ガス圧接ですが、現在施工されている工法の90%以上は、手動ガス圧接です。
本協会で取扱う溶接継手は、突合せガスシールドアーク半自動溶接継手を対象としております。鉄筋の溶接継手は、鉄骨の溶接技術を応用して鉄筋を接合する工法として開発されたもので、接合する鉄筋の端面を所定の間隔の隙間を設けて、溶融金属を介して一体とする工法です。なお、溶接継手は鉄筋端面に隙間があるため、溶融金属が流失しないように裏当て材が必要ですが、この裏当て材には、銅製、セラミックス製、鋼製などが用いられています。
溶接継手は、シールド方法として、治具内シールド方式と、トーチシールド方式の2種類があります。それぞれの方式に、 裏当て材がセラミックス製、銅製、鋼製などがありますが、セラミックス製と銅製は溶接後、裏当て材が撤去できるので、全周の外観検査が可能です。一方、鋼製の場合 は、裏当て材が残り、全周の外観検査はできません。また、下向き姿勢(梁筋)と横向き姿勢(柱筋)では溶接の難易度が異なるため、それぞれの資格が必要です。
機械式継手とは鉄筋を直接接合すのではなく、特殊鋼材製の鋼管(スリーブ又はカプラー)と異形鉄筋の節の噛み合いを利用して接合する工法で、異形鉄筋のみに可能な継手です。鉄筋に生じた引張力は鉄筋表面の節からせん断力として継手金物に伝達され、さらに、継手金物から他方の鉄筋に伝達されるという機構です。このため、引張力を確実に伝達するためには、筒状の継手金物への挿入長さの管理が最も重要ですが、挿入長さ以外に、鉄筋を固定するために、充填材を注入する工法もあり、それぞれの管理項目が定められています。
機械式継手には図2の種類があり、主な継手工法の概要については1~4のとおりである。
鉄筋の製造段階(熱間圧延)で、鉄筋表面の節がねじ状に形成された異形鉄筋を、内部にねじ加工された鋼管(カプラー)によって接合する工法で、鉄筋とカプラーの隙間にグラウト材を注入して固定する継手工法。
継手部に挿入した内部がリブ加工された継手用鋼管(スリーブ)と鉄筋との隙間に高強度モルタルを充填して接合する工法。
鉄筋の端部に摩擦圧接などにより接合したねじを相互に突合せ、長ナットによって接合したのち、長ナットの両端を固定ナットで締め付けて一体とする工法。
異形鉄筋を継手部に挿入した鋼管(継手用スリーブ)を、冷間で油圧により鉄筋の節部に圧着して接合する工法。